2011年12月22日

ブータンのオーガニック100%政策

0 件のコメント :
西日本新聞にブータンが2020年までにオーガニック100%するという記事が載っていました。

2011年3月にインドの有機農業指導者、ヴァンダナ・シヴァ氏の農場で行われた研修プログラムに同行してきました。

村に戻った農家たちは、インドで学んだ堆肥つくりを広める運動を始めています。
研修で学んだことを村人に教えるAta Daza
===========(以下転載)====================
【幸せの描き方 ブータンGNHの今 4】全土有機化 持続的な農業目指す

夢のような計画を、ティンレー首相は、淡々と、当然のように説明してくれた。

 「ブータンは今、ブータンを完全なオーガニックフード(有機食品)の国につくり変えようとしている。2020年には農産物を全てオーガニックに変換する」

 「ナショナル・オーガニック・プログラム(NOP)」と名付けられた計画は07年にスタート。現在、七つの県で実施され、目標の9年後には20の県全てのオーガニック化を目指す。

 実はこのNOPも、ブータンが進めるGNH(国民総幸福)政策の一環なのだ。GNHの理念とされる4本柱の一つは「環境の保全」。首相は、オーガニック化によって、生態系を含む環境の保護と、農業生産性・収益性の両立を図る「持続的な農業」の重要性を強調する。

=================

 西部の村イビサで、オーガニック農家のナムゲイさん夫婦が、猛烈な辛さで知られるブータン特産の唐辛子畑に堆肥を施していた。

 年5千ドル分の唐辛子を生産し、「ブータン一の農家」を自任するナムゲイさん。「数年前に日本から専門家が来て、村人に化学肥料の使い方を教えた。僕は堆肥だけで唐辛子を作ったが、ずっと多く収穫した。僕は僕のやり方でやっているだけ」。自分の農法に自信満々、日焼けした顔をほころばせた。

 オーガニック推進のため政府は農家の研修を実施。これまで約900人が学んだ。昨年から、インドの著名な科学者で有機農法の先駆者ヴァンダナ・シヴァさんの指導を仰ぐ。3月には、シヴァさんの農場で23人のブータン農家が研修を受けた。

 これまで近代農業、農薬を導入し、生産量増加を図ってきた。だが、そのことが環境や命、食の安全そして国民の幸福を脅かしかねない。そうした状況に歯止めをかけ、方向性を示すのがGNHの目的でもある。
=================

 ブータン北部のガサ。オーガニック化のパイロットケースとして05年、最初に指定された県と聞いて、緑滴る原生林を縫い、県都ガサを訪ねた。ガサ駐在の農業普及員チェワング・ゲルチェンさんに話を聞く。

 「オーガニックといっても、少し前に戻るだけ。化学肥料、農薬を使わなければいいだけだ。ローカルな作物は、小さくて形もふぞろいだが、売れる。人々は体にいいと知っている」と、オーガニック推進に強い意欲を見せた。

 ガサ県では、NOPに伴い「1郡(ゲオ)3品運動」を実施しているという。ガサには四つのゲオがあり、70世帯が暮らす、ここカートエ・ゲオの3品はジャガイモ、ミルク、ラン。大分県が1980年代に進めた一村一品運動を思い出させる。「1万本のシイタケのほだ木もある。あすはマーケティングを論議する」。ゲルチェンさんは商品化に期待を込める。

=================

 意外だが、約8割を占めるブータンの農村人口が生むGDP(国内総生産)は2割にすぎない。主食の穀物の自給率も6割程度。急速な都市化は半面、農村人口の減少を促し、政府に早急な農村対策を迫った。その柱の一つが、国を挙げてのオーガニック計画といえる。

 都市、農村双方の将来を危ぶむティンレー首相は語気を強めた。

 「村へ戻った若者が、地域の観光ガイドになって観光振興を進める。そんな雇用の道筋も始まっている。現代的なオーガニック農民が生まれるかもしれない。時間がかかるプロセスだが、成功できると信じたい」

 ブータンのオーガニック作戦は、国民の食の安全を保つだけでなく、国や地域のあり方を問うテーマなのだ。


2011/09/17付 西日本新聞 朝刊

0 件のコメント :

コメントを投稿