2017年4月24日

ならいごとの旅 in 台湾(10)山に生きるルカイ族の民族植物と愛玉づくり

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ルカイ族の集落で愛玉づくり


数年前、台湾の屋台で初めて愛玉という植物のことを知り、なんとか現物と加工の様子を見たいと思っていましたがやっと実現しました。

愛玉のタネからペクチンを取り出し、ゼリー状に固めた物が屋台でもよく見られるオーギョーチ。


そしてこれがそのタネ。


愛玉の樹(学名:Ficus awkeotsang クワ科イチジク属)は、台湾の固有種で、主に南東部の山間地帯で育てられているようです。


屏東からバスで約1時間。今回おじゃましたのはルカイ族が多く居住する高雄県屏東神山集落。ちょっと前までは、特別許可書がないと入域できなかった原住民の地ですが、いまは、検問所で入域日と時間を記入するだけで入ることができます。

多くの原住民の村は、民国88年(88風災)を受け、山をさって平地に移住していますが、神山集落、霧谷集落では、教会を中心とした昔ながらの石造りの町並みがのこっており、お米のない古い時代から受け継がれて来たラルマイ(台湾アブラススキ、中国名:油芒)や、ホンリー(台湾アカザ)、チナブというチマキに使う植物、餅を包む月桃など、在来植物を活かした食文化がいまに受け継がれています。
神山集落
霧台集落
タネがどこから現れたかを語り継ぐアジア・オセアニア地域に共通する「ハイヌヴェレ神話」とともに、世界の各地で共通してみられる「射日神話」があります。射日神話とは、昔、太陽がたくさんあり、これを弓矢で射落として現在のようにひとつにしたという神話。

日本でも太陽の象徴とされる三足烏を射る神話が三重、熊野地域にありますが、ルカイの村にも同じような神話があります。

そんなわけで、弓を射る銅像が村のあちこちに見られました。
射日神話の像


神山集落にある神山愛玉店は、台湾の若者に人気のオーギョーチ専門店。その老板の親戚という「猟寮民宿」にステイしました。この民宿についてはあとで書きますが、かなり個性的なオーナーが20年かけてつくったという原住民族の固有文化である石板屋を活かした独特の建築、そして代替エネルギーや木彫アートのインテリアが異国情緒たっぷり醸し出しています。

オーナーに神山集落にある愛玉の樹を案内してもらいました。

もっと山奥にあるかと思っていましたが、なんと、家垣のようにそこらじゅうに生えていました。まさに藤蔓のように、ビンロウの樹に巻き付いて上っていきます。




愛玉には、雌株と雄株があり、雄株にも雌株にも実はなりますが、胡麻粒のようなタネができるのは雌株だけ。割ってみると、雌雄どちらの株かわかります。

受粉にはコバチがかかわっており、雄1に対して雌10-15株まで受粉できるといいます。12月から4月に開花し、干します。



割ってみると、乳液がながれてくる。これがオーギョーチが固まるペクチンの正体で、手がべとべとになりなかなかとれません。

雌株の果実にはタネがしきつまる


愛玉店のおばあさんに愛玉の使い方をレクチャーしてもらいました。

気をつけないといけないのは水の質。純水ではだめ、油がついた手で触ってはダメ。ミネラルを含んだ硬水が適していて、不純物があった方がペクチンと反応して固まりやすいのだそうです。


デモストレーションしてもらっているといつのまにか人が集まって来た!
泡がたってきたらそろそろできあがり

搾りかす

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<レシピ>
愛玉子 40g
冷たい水 3ℓ

ストッキングに愛玉子をいれて揉む。5〜10分後、水が濁ってくる。白い泡がたってきたら揉むのを止まる。常温で30分〜1時間置いておくとできあがり。

レモン、金柑、梅、パッションフルーツ、酒を入れて食べてもよい。粟や紅藜をいれることも。(愛玉店の陳先生のメモより)
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そして30分後・・・・。
お話を聞いている間にできあがりました。



愛玉店の97歳になるルバルバさんは日本語が話せるようです。日本名はうみこさん。



愛玉店のみんなと、霧台、茂林、瑪家集落を案内していただいた屏東科学大学の先生方と。




たねを仕入れて来ました。
日本でもやってみたいです。


石板屋セルフビルドの狩猟民宿



さて、神山愛玉店の親戚でもある猟寮民宿は、なんとも個性的なセルフビルドの民宿。

オーナー夫妻が20年かけて作ったというこの民宿は、原住民の伝統的な石建築を活かしたつくりになっており、手堀りの銅像や木彫があちこちにならぶ様子は圧巻です。

民宿からの風景





屋根に飾られた顔もおとうさんの手作り。原住民は髪を長くのばす習慣があり、屋根にひらひらと髪がたなびく姿は、お父さんの横顔そっくり!!

こちらもお父さん作。

お風呂は薪を炊くと、客室までストーブでお湯があたたまる仕組みになっている。オール非電化。


そして、おかみさんのトコイナ(イナは原住民の言葉でお母さん)は、とてもパワフルでユニークな人なつこい人柄で、楽しいジョークでもてなしてくれます。
お庭のハーブを摘んでハーブティーをつくってくれました。



イナの出身は、徒歩20分のおとなりの霧台集落。
こちらもおなじルカイ族の村です。

生まれ育った特別なおうちを案内してくれました。

霧台の旧居でトコイナと。
お庭には、ルカイ族の伝統的な石板屋をあしらったミニチュアガーデンが。

イナに集落を案内してもらいました。
原住民の多くはいまもキリスト教徒で、教会を中心にまちが構成される。


うすい石板を積み重ねた建築が独特の集落
教会の建築も石づくり。
手しごとの文化が今に残る。



霧台集落にある摩凱咖啡では、自家製コーヒーや愛玉の他、小米酒(粟のお酒)を絶景の見晴らしとともに味わうことができます。


コーヒー店からの絶景。


<その他オススメのお店>
神山集落の「佳人香草工坊」では、台湾の原生植物をはじめ、いろんなハーブを使ったお茶、パン、化粧品、調味料を販売。

ハーブに詳しいお父さんが、お庭を案内してくれます。





やはり私は山地の民が好きみたいで、この空気は、ブータンを思い出し、すごく懐かしい郷愁を覚えました。

 雨上がりの神山集落
そしてなにより心を打たれたのは、ここに生きる人たちとの出会いや生きる姿。すごく感動したのが、ちょっと見にくいけど、こちらのヘリコプター型のスプリンクラー。

88風災のとき、多くの原住民の集落は谷ごと土砂でうまり、神山、霧台集落は無事だったものの、道路が1ヶ月にわたり遮断され、村は孤立した。
そんなとき、諸外国から、ヘリコプターで支援物資が運ばれて来たと言います。それを忘れないように、記念としてヘリコプターのスプリンクラーを設置し、救援物資を運ぶ様子を模しています。

「わたしたちは、みんなに助けてもらったから、日本の東北震災の時にもみんなで10万円寄付したのよ。困った時は助け合わないとね。苦しんでいるひとをみるとココロがいたいよー。」

ところどころ日本語まじりで一生懸命伝えてくれたイナの姿が心に焼き付いてはなれません。

台湾で一番好きな場所かも知れません。きっとまたここにかえって来たいです。

もしも、この記事を読まれて、実際に訪ねられた方がいらっしゃったら、どうか、みんながどんな様子だったか、おたよりくださればとてもうれしいです。

どうか、ここにいきるひとたちが変わらず安心で平和な暮らしをおくれますように・・・


神山愛玉
902台湾神山巷16-1號

獵寮民宿
902霧台村1鄰神山巷1之21號


<アクセス>
高雄〜屏東まで台湾鉄道で約40分。屏東からは屏東客運で霧台まで1時間

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